岸田真理子公式サイト「金星美術館」のblog、“準備室だより”です。作品展のスケジュールなどをお届けします。
サイト運営担当のyamamomoが作品に感じたことや引き出されたことなどを、“見る側”のひとりとして書いたりもしています。

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「せんだん」(銅版画)
せんだん――樹の名前です。


  岸田真理子 銅版画「せんだん」 

   Special Thanks to: Ikezaki Tsuguhito



成長の早い樹で、わたしの住む香川では、川の土手や山でよく目にします。
岸田さんの香川のアトリエがあった果樹山のまわりにも、この樹がたくさんありました。

大きな葉をしげらせ、うすむらさきの花をたくさんつけ、秋には丸い実をむすび、変化に富んだ姿を見せる樹ですが、わたしは冬のせんだんが――葉も実も落として、ひんやり透明な空に向かってすっと枝をのばした姿が――いちばん好きです。

じっと動かないけれど、芽生えたところでずっと生きていくけれど、樹は知っていると思う。
遠くの森のことも、星々のことも、砂漠のけもののことも。
春を待ちながら、夏の記憶をたどりながら、樹は世界を思っている。まぎれもない一本の樹として、ここに在るために。

だまったまま何もしていないようにしか見えないけれど、樹が思っていてくれるので、世界は今日も世界であり続けることができるような気がします。


形のあることは何もできなくても、動けなくても、思うことはできます。
思いがやがてつながりあうと、あたたかくやさしい風になります。
思うことが、はじまり。思うことを、やめない。
やがて、あそこへ届く風になるように。



[writer:yamamomo]
| 作品のこと|銅版画 | 00:37 | comments(0) | - |
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