岸田真理子公式サイト「金星美術館」のblog、“準備室だより”です。作品展のスケジュールなどをお届けします。
サイト運営担当のyamamomoが作品に感じたことや引き出されたことなどを、“見る側”のひとりとして書いたりもしています。

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「月下水下」(銅版画)
2011年、最初の更新です。
年末年始、予期せぬできごとが多発したりうっかりMacのキーボードを使えなくしたり(100%自己責任です。何とか復旧)・・・だったのですが、準備室だよりは今年も続きます。
更新間隔が長くなりがちでも、毎日見に来てくださるたくさんのみなさま、ありがとうございます。おっとり更新がまだしばらく続きそうですが、どうぞよろしくお願いいたします。




  岸田真理子 銅版画「月下水下」 

   Special Thanks to: Ikezaki Tsuguhito



夜の世界の銅版画です。

タイトルに“月”とあるから夜――というのではなく、夜の空気が絵の中に描かれてあると感じます。


20代を迎える少し前から、30代に入って数年過ぎるまでを、都市部で暮らしました。
一晩中明るいままの街を見ながら、毎日ここには夜がない、と思っていました。

日が沈み、やがておひさまの光がすっかりなくなってしまうと、安心できるのは鍵をかけた部屋の中だけで、何年も住んだ土地でも壁の向こう側は体をこわばらせて警戒しなければならない世界でした。
電灯の光が届かない物陰は、何かよくないものがひそんでいるようでぞっとさせられました。

ただ暗いだけの、おひさまの光が照らしてくれない不安な世界が訪れる時間だったのだと思います。


田舎では市街地でも深夜には灯りが少なくなります。
だから暗がりは都市部と比べものにならないくらい多いのですが、わたしはほとんどまったくと言っていいほど、こわくありません。

暗くなると、夜が――夜という名前の存在がやってきて、世界を満たしているように感じます。ただ温度が下がるとかそういう違いではなく、別の空気がやってきて、それといっしょに昼間のわたしたちとは別のリズムをきざむものたちがやってきて。
見えないけれど、そこでは何かが交わされ、結ばれ、あたたかい流れがめぐっているようです。

都市のあの暗い時間が体をかたくさせたのは、おひさまが行ってしまっても、そこに夜がやってくることができなかったからなのだろうと思います。
それが明るすぎたせいなのか、都市をつくったヒトが夜という存在をだんだん忘れていってしまったせいなのか、わかりませんが。


今日の岸田さんの銅版画「月下水下」。
おひさまのいない世界をわたしがやり過ごしていた十数年間も、夜はちゃんとこのようにあったのだとたしかめられた気持ちになるほど、“夜の空気”を感じます。


[writer:yamamomo]
| 作品のこと|銅版画 | 22:01 | comments(0) | - |
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