岸田真理子公式サイト「金星美術館」のblog、“準備室だより”です。作品展のスケジュールなどをお届けします。
サイト運営担当のyamamomoが作品に感じたことや引き出されたことなどを、“見る側”のひとりとして書いたりもしています。

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「山の実」(スチレン版画)
2007年の七夕に限定10部で発行された詩と版画集「この世界への恋文」から。



 山の実


 岸田真理子 スチレン版画「山の実」



           山の実

       すもも やまももの路
       よく すべる
       ゆだんならない 紅い路
       小鳥と競って もいではみるが
       すっぱいやまもも ゆだんならん
       まっかな食べ頃 喜んでみたが
       すももは 虫の穴だらけ
       すもも やまももの路
       よい 香り
       キチキチ ジクジク 紅い路


                岸田真理子




“ゆだんならない 紅い路”は、きっとアトリエ近くの、お山のどこか。

すもも・やまももは四国の風土と合うのか、こちらではよく育つようです。
特にやまももは、ほんとうにいたるところにあって、わたしyamamomoの住んでいるアパートの敷地にも、1本立っています。華やかさとは縁遠いような姿の常緑樹なのですが、実を結ぶ今の季節だけは周りの地面をやまもも色に染めて、まさしく今日の作品のような感じになります。

今年の春のこと。
そういえばやまももの花ってどんな風だか知らない、と気がついてアパートの木を見てみました。緑の葉っぱの中をのぞきこむようにすると、これが花かとあきれるくらいに地味でささやかな花が咲いていた。
それが暖かくなると、緑の丸い実をぎっしりと結び、雨降りの続く中みるみるうちに熟れていきました。

この果実、“食べられるけれどわざわざ食べるものではない”類のものだと思っていたのですが、先日こちらで、稀にデパートで売られていることもある、と知ってびっくり(調べて見たら食用・加工用の栽培品種があるのだそうです)。
yamamomoを名乗っているわたしですから、これは食べとかなあかんやろ、ということで初の“共食い”に挑戦することに。

かたまって熟れている実のひとつをつまんで少し指先に力を入れると・・・そのひと粒が枝から離れるのと同時に、まわりの実もぱっとはじけるように落ちました。
土にあたって、少し湿ったようなぽろぽろっという音がした。


そうだったのか。

紅い路、あれは自然の落果だけでできているんじゃないんだ。
鳥がやってきてついばむ度、さるが手をのばす度、あの“ぽろぽろっ”という音がそっと響いているんだ――そう気がついてから、「山の実」を見ると、音もわかるようになりました。


遠く近く、月の夜に朝日の前に、ぽろぽろ・ぽろぽろ・ぽろぽろ・・・。





鳥のまねをしているような気持ちで口にふくんだやまももの実は、あまずっぱくてかすかに渋みがあって、はじめてなのによく知っている味でした。




[writer:yamamomo]
| 作品のこと|スチレン版画 | 23:47 | comments(2) | - |
コメント
tsuguさん

こらこら、すももはどこ行った? とひとりツッコミ入れながら、やまももの話だけで終わってしまいました(笑)

あの音はすてきでした。
tsuguさんの写真がなかったら、今でも知らないままでした。
ありがとうございます。
| 受付係yamamomo | 2010/07/05 9:16 PM |
岸田さんの表現力は当然として、この美術館の管理人さんのことばの表現力にもいつも感心してしまいます。
ここからリンクされたらかなんわ(笑)
| tsugu | 2010/07/05 7:04 PM |
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